ねらわれる脱北女性…「性的被害・人身売買」告発の動き

高英起  | デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

米国の人権団体・北朝鮮自由連合の「北朝鮮女性実務グループ」は3月、北朝鮮女性の人権状況の改善に向け国連にいっそうの努力を促すための討論会を、ニューヨークで開催する。同月13日から国連で第61回国連女性の地位委員会が開催されるのに合わせ、中国における北朝鮮女性の人身売買被害を主題として論じるという。

性暴行や強制堕胎も

実務グループのジェイソン・ウェスト代表は、米トランプ

新政権で国連大使となるニキ・ヘイリー氏をはじめ、日韓などの外交官も招待すると明らかにしている。

筆者の下には、中国当局が近年、自国内で行われている脱北者の人身売買を厳しく取り締まっているとの情報が、断片的に伝えられている。ただ、それは脱北者の人権を保護するためではない。むしろその逆であるとさえ言える。

北朝鮮の人権侵害を巡り、中国当局が多大な責任を負っているということは、各方面でたびたび指摘されている。たとえば、米紙ワシントン・ポストは昨年、中国のブローカーの証言に基づき、「中国で身を潜めている脱北女性の5人に1人がオンライン上の性風俗業に関わっている」と報じた。

(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち

脱北女性たちがそのような仕事に吸収されてしまうのは、中国当局に捕まることを恐れているからだ。食堂などで働いていれば、当局から尋問を受けるリスクが高くならざるを得ない。

脱北者は逃避行の途上であるという特性上、司法機関などに被害を訴え出ることができず犯罪に対して無防備な状態に陥りやすいのである。

(参考記事:ねらわれる少女たち…第三国滞在中の脱北者の性犯罪被害が深刻

中国当局に捕まれば、北朝鮮に送還され、国外逃亡者専用の拘禁施設で拷問などの虐待を受ける。とりわけ、性暴行や強制堕胎など、女性虐待が日常化している実態は、元収容者や関係者の告発により明らかになっている。

(参考記事:北朝鮮、拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も

中国に在住するデイリーNKの対北朝鮮情報筋によると、昨年11月と12月にも、中国国内で移動中あるいは潜伏中だった脱北者30人余りが、公安当局に逮捕された。全員が丹東に移送され、北朝鮮に強制送還されたと見られる。

中国当局が間接的にとは言え、北朝鮮における人権侵害を助長しているのは確かな事実だ。国際社会がこの事実の重大さをより強く認識し、関心をはらうことは、北朝鮮の人々の窮状を改善するのみならず、北朝鮮の体制変化を促す上で重要なことであると筆者は考える。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち